しなやかなカバーにまとわれた書籍『古典の効能』(著)寺田真理子、ある御縁でわたしの手元にきた。
初めの章は、清少納言を取り上げている。清少納言は、教養の高さを鼻にかけた嫌みな女というイメージがある。その一方で、実は、喜び上手な人であるそうだ。
筆者が語る次の一文が印象的であった。「清少納言の喜び上手は、意志の力が生んだ人格なのです」という文章である。この『意志』という言葉は、こうなりたいといった表面的な強い願望をイメージする。わたしは、将来、学校の先生になりたい、医者になりたい、といったような。しかしながら、この『意志』という言葉は、将来に目掛けた、表面的な、強い願望だけを指すものではない。毎日の行動ひとつひとつに、自身の心がけを全うすべく、それを実行していくための『意志』でもあるということだ。毎日の生活は、決断の連続で、それが習慣になり、そして、いつの間にか、自身の人格を作る。そういうことである。さらには、何歳になっても、どのような環境下であっても、『意志』の指針となる心がけを変えることで、人格を変えることができるということでもある。
清少納言の心がけをいただきます。
「『何も何も、小さきものは、みな愛し。』『何もかも、小さいものは、みなかわいらしい』と愛でているのです。こんなふうに、ささやかなものにも目をとめて、その価値を見いだす。そんな意識の向け方を清少納言は、心がけていたのではないでしょうか。そのまなざしは、自分自身にも向けられたことでしょう。持ち前の観察眼で、自分の至らない点を数え上げる代わりに、自分の魅力的なところを、そして、世の中にある素敵なものを数え上げて心を保って生きてきた。」