中野善壽『ぜんぶ、すてれば』

 2年前から想いがあり、新年の賀状をやめた。日本の伝統文化を継承と声高々に言っている割には、このありさまである。しかしながら、やめる理由が、継続する理由以上に、自分自身を納得させることならば、やはり、自分の意思を大切にしたい。そう、すてた。

 崇拝している中野氏も『人付き合いを捨てる。未来を語れる仲間だけでいい』と話す。長生きの時代には、こまめに手放すことをしなければ、どんどん重荷が増えていく。持ち物だけでなく、人との出会いもそう。付き合いを続けたいのは、明るく未来を語れる仲間。愚痴や不満を言っているばかりの人とは、自然と疎遠になると。付き合いは長いほどいいというものでもなく、会ったばかりの相手から新鮮な学びを得ることもしばしば。仰る通り。言葉をかわしたことのない相手でも、その動作に、素敵だなという感情を抱くこともある。人の生き様が、現在の行動を作る。だから、いまが大切。今というこの瞬間に集中するために、過去の拘りを捨てる。実にシンプルである。